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モーションコントローラーの応用分野と、汎用位置決めとの違いについて(#5)

(第5回)

このシリーズもお蔭様で、いよいよ5回目になりました。

さて、今回は、

 

    回転の同期は保ちつつ、しかし、その1回転は、1回転中の決まった位相で加減速を入れたい。

    動作の度に、干渉の有無など、いちいちソフトで確認しなくても、確実に動作させたい。

 

について考えてみたいと思います。

 

 

⑦は、たとえば、装置によっては、一定速度が、その部位の特性に合わず、一定の回転周期は保ちながらも、「部分的には速くしたい」、「遅くしたい。」とか言う要望があるものです。

 

このような場合は、モーションコントローラを使うと、比較的簡単にできます。

主軸は、一定回転させ、従属軸側に電子カムを使用します。

この時、電子カムに送りカムを使用すると、カム曲線の傾きが緩やか部分では減速し、急な部分では、加速するような動きをしながら、主軸に同期して回すことができます。

加速・減速するタイミングは、同期開始の位置(位相)を、変更することで可能になります。

 

同様のことを、位置決めユニットで行うことは難しいと思います。

 

 

 

⑧は、たとえは、INDEX Tableにワークを投入して行くシーケンスが考えられます。

 

位置決めで行う場合には、まず、INDEX Tableに接続されたACサーボモータなどに、INDEXの1周の1分割分(8分割ならば、1周の1/8)に相当する移動量を、INCで位置決めします。

位置決め完了を確認したら、ワークを投入する部位のACサーボモータに、投入の移動量をABSで位置決めし・・・・・・・。

およそ、このような繰り返しになります。

 

これを、モーションコントローラを使用して、構成を考えると、

たとえば、下記のようになります。

(構成は、いろいろ考えられます。)

 

主軸モータ(仮想)→————-[Gear 1/1]——————–[Gear 1/1]

                                                                   |                                    |

                                                                   |                                    |

                                                              [送りカム]                   [カム]

                                                                                                   

             INDEX駆動モータ  投入部駆動モータ

 

このような、モーションコントローラの構成にし、

INDEXの送りカムの電子カムのデータは、たとえば、0度から25度で、送り量0-100%に設定します。

ここでの100%とは、先の位置決めの例の、INCの移動量と同じにします。

 

投入部のカムは、通常の電子カムを使用し、50度から120度で投入の行き(100%)、120度から180度で停滞(100%維持)、180度から300度ぐらいで戻り(0%)のようなデータにします。

この場合の100%は、投入部のモータの投入位置までのABS移動量と同じにします。

 

ここまで設定すれば、後はシーケンサーから主軸のモータに、速度指令やINCの位置決め指令、あるいは、JOG指令を与えることで、INDEX Tableと投入部は、干渉や、動作位相のずれが、発生することもなく永遠に動作し続けます。

 

主軸が、0-25度でまず、INDEXが分割分移動し、50度から120度で、投入部のモータが投入動作し、180度から300度で戻り動作をするようになります。

 

一回ごとに、位置決めの完了や、別の軸への位置決め開始指令を出すこともありません。

 

全体のサイクルタイムをUPするためには、主軸に対する速度指令を増速することで、各モータも同期して速度UPします。

 

 

電子カムはアイデア次第でいろいろ応用の方法がありますが、機構的に考えればまさにカムですが、制御的見地からすると座標系の単位変換と考えれば良いでしょう。

今回の例では、電子カムデータで角度(度)→変位(%やmm)に、プログラムレスで変換していると考えるとこができます。

 

 

  ご了承下さい。

ここに記載した内容は、その動作や性能を、弊社で保証するものではありません。

また、各メーカーの仕様変更、仕様追加について記載内容が十分追従できていない場合があります。

 

弊社に許可なく内容を転載することは、ご遠慮ください。

 

ご質問頂いても、ご回答できない場合がありますので、各モーションコントローラーメーカーのSEなどに、お問い合わせください。

 

モーションコントローラーの応用分野と、汎用位置決めとの違いについて(#4)

受注した装置の設計が、たて混んでいたため、ブログの更新が滞っていました。

さて今回は、

 

⑤既に存在する装置と、同期をさせて装置を動作させたい。

 

⑥ある物の形に、多軸(2軸あるいは3軸以上)で同期させながら、ならうように装置を動かしたい。

 

以上のような場合について、考えてみたいと思います。

 

 

⑤は、古いカムで動いている装置などに、同期して動作する機構を追加する場合です。

 

メカ的な方法として、カム軸に新たに、メカカムやリンク機構を追加する方法がありますが、メカ機構が入るスペースが無かったり、現地改造が困難であったりします。

 

電気的方法としては、普通はバリカムやカムポジショナーなどを、既存のカム軸に配置して、接点信号を利用する方法が一般的です。

しかし、この方法では、ON-OFFで操作するアクチュエータしか使用できず、カム軸に同期する形で、新規にモーターなどを回すことはできません。

 

 そこで、モーションコントローラーを、使用する方法があります。

既存のカム軸に、同期用のエンコーダーを取り付け、モーションコントローラーの外部同期エンコーダーとして接続します。

新規に追加するACサーボモーターは、このモーションコントローラーに接続します。

これで、既存のカム軸に同期した形で、ACサーボモーターを回すことが簡単にできます。

 

同様のことを、位置決めユニットで行うことは、大変難しいと思います。

 

 

 

⑥は、少ない軸数で、ワークにならうように動かす装置、たとえば、樹脂や接着剤の塗布装置などです。

 

位置決めユニットで行う場合は、多点の位置決めを連続動作で、ポイント指定して実行する方法などが考えられます。

この場合、軸間の同期は、補完で指定します。

複雑な形の場合は、位置決めポイント数は、100ポイントを超えるでしょう。

また、3軸を超えるような補完運転は、出来ない位置決めユニットがほとんどですので、4,5軸と同期が必要な場合は、位置決めユニットは使用できません。

 

一方、モーションコントローラーを使用する場合は、電子カムを使用する方法があります。

詳細な動きが必要な部分は、電子カムとして、座標を連続する変位データとして作成します。

これで、制御上の主軸に従属する形で、各軸が同期して動作するようになります。

この方法は、ポイントパラメータを、何ポイントも作成するよりも楽で、しかも、電子カムデータを、瞬時に入れ替えることができ、複数種類の複雑な動きへの対応もできるようになります。

また、実軸が、制御中に停止するような動作が必要な場合は、仮想軸を何軸が使用する必要があるので、十分検討して仮想軸が何軸必要か、事前に把握しておく必要があります。

 

電子カムは、上手に使うと非常に便利なものですが、使用上の制約があったりするので、そのあたりの事情も十分、把握しておく必要があります。

 

たとえば、三菱のモーションコントローラーは、電子カムを使用する場合は、絶対値エンコーダーが使用できません。

(仕様が変更されていなければですが)

 

  ご了承下さい。

ここに記載した内容は、その動作や性能を、弊社で保証するものではありません。

また、各メーカーの仕様変更、仕様追加について記載内容が十分追従できていない場合があります。

 

弊社に許可なく内容を転載することは、ご遠慮ください。

 

ご質問頂いても、ご回答できない場合がありますので、各モーションコントローラーメーカーのSEなどに、お問い合わせください。

モーションコントローラーの応用分野#3

モーションコントローラーの応用分野と、汎用位置決めとの違いについて

 

(第三回)

さて、今回は、モーターの角度や、位置と連携(同期)してエアシリンダーなどを駆動したり、同期して動作している最中に位相を変更する方法について、考えてみたいと思います。

③ ある軸の位置や角度に応じて、ON-OFFする信号を作りたい。(連携してエアシリンダーなどを動作させたい。または、動作のタイミングの精度を向上させたい。)

    動作中に、同期制御軸間の位相を変えたい。

 

 

 

③は、ACサーボモーターや、ステッピングモーターで駆動している部位に、さらにエアシリンダーなどを使用するために、同期したタイミングでソレノイドバルブのONOFFさせる必要が、自動機などではよくあります。

 

このような場合は、以前であれば、カム軸に近接センサーなどを取り付け、ドグの位置を調整して、ON-OFFする信号を作くる方法や、カムポジショナーやバリカムなどを配置して同期したON-OFF信号を作って利用していました。

 

位置決めユニットを利用した場合では、ラダープログラムより、現在値と比較しながら、ソフト的にON-OFF信号を作ることは出来ますが、スキャンタイムの影響で、高い同期性能を求められる場合には不向きです。

また、接点数が多い場合は、特に、大小比較するラダーが何行にもおよび、わかりにくくなります。

 

 モーションコントローラーでは、このような用途として、同期接点出力が用意されています。

この機能を使えば、軸に同期したON-OFF信号が、位置や、角度、パルス数単位で設定でき、意図としたタイミングで、簡単に利用することが出来ます。

但し、モーションの制御サイクルで(制御軸数の影響を受ける)、同期遅れの時間が変わりますし、出力ユニットの動作時間、ON-OFF駆動されるソレノイドバルブや、リレーの動作時間も加算されますので、必要な同期性能が得られるがどうか?設計段階で、十分検討する必要があります。

 

 

 

④は、位置決めユニットでは、実現することは難しくなります。

1軸、2軸を同期運転する例で考えると、1軸と2軸を同じ速度で、同じ量だけ移動させるとします。

位置決めユニットを使用する場合は、直線補完と言う方法で、1軸と2軸を同期させて運転することが可能です。

しかし、この直線補完運転して移動している最中に2軸だけ少々位相をずらしたいとしても、指令を出すすべはありません。

もし行うことができるとすれば、直線補完運転中の、2軸のみの目標位置変更をするしかありません。

(このようなことが、各社の位置決めユニットで可能かどうかは不明です。)

 

一方、モーションコントローラーでは、1軸を2軸の主軸(入力軸)と見立て、それとは別に仮想軸を、1軸の差動入力とした構成にします。

位相補正分は、仮想軸への位置決め指令や、JOG指令として与えることで、差動として働くので、結果、2軸へは、1軸と位相が変更された移動量として出力されます。

この方法は、目的位置変更より、ラダープログラム上は、はるかに簡単に作成できます。

 

仮想軸の使用方法などは、各社のモーションコントローラーで、異なりますのですべてのモーションコントローラーが、同じ使用方法が可能な訳ではありませんので、ご注意ください。

 

 

 

  ご了承下さい。

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モーションコントローラーの応用分野#2

モーションコントローラーの応用分野と、汎用位置決めとの違いについて

(連載:第二回)

 

今回からは、モーションコントローラーの効果的な用途について、

より掘り下げて考えて行きたいを思います。

 

それでは、第一回目で取り上げた項目のうち今回は、

①、②の用途について考えましょう。

 

    多数の軸を制御したい。

(1台のコントローラーあたりの制御軸数が、容易に多く取れる。)

    多軸の同期運転がしたい。

(3軸を超えるような軸数の同期運転に、容易に対応可能。)

 

 

    ついては、現在市販されている、三菱電機やキーエンス製の位置決めユニットでは、

1台あたりの最大制御軸数は4軸です。

 

(注意)三菱電機製では一部に8軸仕様あります。

また、キーエンス製KV-ML16Vがありますが、

ここでは、モーションコントローラーとして扱うため、

位置決めユニットのカテゴリから除外します。

 

これらの位置決めユニットは、ある条件下で複数台使用可能ですので、PLCで扱える制御軸数は4軸のn倍ということになりますが、位置決めユニットが、何台使用可能か否かは、使用しているCPUの型式、その他のユニットの使用状況、電源、拡張ベースユニットの配置状況などで左右されますので、全体システムとして、使用可能ユニット数をまず確認する必要があります。

 

プログラムからこれらの軸を扱う場合、ユニット1の1軸、2軸、3軸、4軸、ユニット2の1軸・・・4軸と言うふうに管理ことになり、何度も重複する軸番号とバッファーアドレスや、システムデバイスアドレスを明確に区別しながら、プログラミングする必要があります。

 

 一方、モーションコントローラーの場合は、一般的にシステム内は1連の軸番号として扱われるので、1軸やX軸が何度も出てくることはありませんので、単純な重複に悩まされることはないでしょう。

 

三菱電機のモーションCPUQ172xxでは8軸まで、Q173xxでは、32軸まで制御可能ですが、モーションCPUをマスタースレーブ接続することで、これらのn倍でさらに拡張も可能です。

キーエンスのKVML16Vは、仮想軸を含む16軸まで制御可能です。

ユニットとしては、5台まで使用可能ですが、マスタースレーブ接続はできません。

 

モーションCPUの型式や、使用するモーションOS、制御モード、モーションユニットの型式で、扱える軸数数が変わるので、必要軸数は設計段階で確定しておく必要があります。

 また、制御軸数や制御モードで、モーション制御周期が変わる場合があるので、注意が必要です。

一般的には、制御軸数が多いほど、制御周期は長くなり同期性能には、厳しい方向になります。

このあたりも、装置として何軸必要で、同期性能はどの程度必要かを、よく検討しておく必要があります。

もし、精度を重視するのであれば、制御軸数を減らすなどして、対応する方法も検討します。

 

    軸あるいは、3軸を超えるような同期運転は、モーションコントローラーでないと同期性能が保証されませんので、3軸や4軸以上で同期が必要な装置の場合は、モーションコントローラーを選びます。

もともと、多軸の制御を目的にしたモーションコントローラーですので、ACサーボアンプとの制御信号の接続も高速な伝送(SSC NetMECHATROLINKなど)を利用したものがラインナップされているので、配線工数の削減になるほか、サーボアンプの設定も、コントローラー側からの一括管理になるなど、パラメータの設定・管理工数の削減にもなり便利です。

 

 

さて、次回は、モーター同士の同期ではなく、エアシリンダーやセンサーと同期を取る方法や、同期している軸間での位相変更の方法について、考えてみたいと思います。

 

 

 

 

  ご了承下さい。

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モーションコントローラーの応用分野 #1

モーションコントローラーの応用分野と、汎用位置決めとの違いについて

(第一回)

1・はじめに

近年、PLCの性能向上は目覚しく、その演算速度の向上により、スキャンタイムの短縮、応用命令の多様化、高級言語なみのプログラム言語のサポート(ストラクチャードテキストや、スクリプト)、上位・下位向けの通信機能の充実(イーサネットやデバイスネット、CC-LINKなど)、その他、浮動小数点変数、マクロ、ローカルデバイス、引数デバイス、プログラムの構造化のサポートなど、プログラマーが思い付きさえすれば、ほぼ何でも実現できる環境が整って来ています。

一方、PLCや、PLCに配置される位置決めユニットと用途は似ているものの、しかし、異なる物として、モーションコントローラーの存在がありますが、これらのモーションコントローラーは、PLCメーカーが、PLCCPUとは、別のCPUとして供給している物、PLCの高機能ユニットとして供給されている物、あるいは専業メーカーが、供給している物とさまざまで、PLCほどはっきりした商品カテゴリーとして、確立されている訳では無いように思われます。

よって、メーカーごとに、プログラミング環境や言語、機能、構成、構造、使い方が異なり、PLC以上に、比較選定するのに苦労している方が多いのではないでしょうか?

また、ACサーボモーターや、ステッピングモーターを利用して、位置決めしたり、単純な2軸の同期運転を行う程度ならば、位置決め制御でも十分な性能が得られることもあり、そもそも、「どのような場合に、モーションコントローラーを使用すべきか分からない?」とか、「違いが分からない?」と言う話をよく耳にします。

そこで、これから数回に分けて、モーションコントローラーの特徴的な利点、設計上注意するべきポイント、位置決めユニットとの使い分けなど、使用した経験を交えて紹介して行きたいと思います。

 

2・モーションコントローラーの利点と用途

それでは、位置決めユニットに対して、モーションコントローラーの利点には、どのようなものがあり、どのような用途に使用したら効果的なのでしょうか?

 

大きな特徴の一つでもある、同期制御機能を中心に考えてみましょう。

 

    多数の軸を制御したい。(1台のコントローラーあたりの制御軸数が、容易に多く取れる。)

    多軸の同期運転がしたい。(3軸を超えるような軸数の同期運転に対応可能。)

    ある軸の位置や角度に応じて、ON-OFFする信号を作りたい。(連携してエアシリンダーなどを動作させたい。または、動作のタイミングの精度を向上させたい。)

    同期動作中に、同期制御軸間の位相を変えたい。

    既に存在する装置と、同期をさせて装置を動作させたい。

    ある物の形に、多軸(2軸あるいは3軸以上)で同期させながら、ならうように装置を動かしたい。また、ならう対象を瞬時に変更したい。

    1回転の同期は保ちつつ、しかし、その1回転は、1回転中の決まった位相で加減速を入れたい。

    動作の度に、干渉の有無など、いちいちソフトで確認しなくても、確実に動作させたい。

    装置動作サイクルタイムはできるだけ速くしながらも、必要な動作はできるだけゆっくりしたい。

    ワークがコンベア上を移動した状態で、装置になにか作業を行わせたい。

 

上記のような用途において、モーションコントローラーでは、位置決めユニットより、はるかに簡単に精度が高く制御が可能です。

位置決めユニットでも、速度や精度上の問題がなければ、同じような用途に応用できる例はありますので、設計時によく検討して、どちらを使用すべきか?まず決めなければなりません。

 

 

それでは、次回からは、モーションコントローラーが、有利と思われる各事例について、考えて行きたいと思います。

 

 

  ご了承下さい。

ここに記載した内容は、その動作や性能を、弊社で保証するものではありません。

また、各メーカーの仕様変更、仕様追加について記載内容が十分追従できていない場合があります。

 

弊社に許可なく内容を転載することは、ご遠慮ください。

 

ご質問頂いても、ご回答できない場合がありますので、各モーションコントローラーメーカーのSEなどに、お問い合わせください。